アーケードゲーム筐体(風)ハードの製作
はじめに
東京ゲームショウなどの所謂ゲームの展示イベントで、開発中のゲームをプレイアブル展示するのに平素は、タブレット端末、WindowsのノートPCやスタンドアロン型のVRゴーグルを活用してきましたが、他の出展ブースでも同じような端末で展示しているため、画面や展示ポスターなどを見なければ割と均一的に見えてしまいます。
なんとか目立つ展示手法はないか?という点を考えたときにアーケードゲーム筐体はどうだろうか?ということで開発したのが今回ご紹介する筐体です。
(1)ゲームハードウエアとしての構成
とはいえ、普段はUnity等でPC向けのゲームをビルドすることが多い弊社なので、ゲームハードとしてはコアはPCとするのが簡単です。Windowsで動いているミニITXファクタのPCを内蔵したハードとしました
- mini PC
- 23インチディスプレイ
- USB接続アケコン基板+ジョイスティック+ボタンスイッチ
- USB給電のアンプ内蔵スピーカー
- カンバン照明用LED
運用中にキーボードやマウスなどを接続してメンテすることや、収容するゲームによっては1P vs 2Pのシチュエーションも考えられるので、前面パネルにUSB端子も出して容易に使用できるようになっています。
(2)デザインと構造
筐体を構成する上で、次のことに特に配慮しています
基本コンセプト
- レトロなゲーム筐体の意匠(形状およびグラフィック)
- 23インチのディスプレイをVESAマウントを使用して確実に固定できること
- 筐体の運搬・稼働中のプレイヤーの激しい荷重や入力に耐える堅牢性があること
以上のことからデザイナーの方と概形を確定、その形状を目指して、骨組みとなるアルミ押し出し材フレームによる内部フレームの設計、さらにレトロな外観を実現するための外板をステンレスとスチールの板金プレートで構成していきました。
レトロなゲーム筐体の意匠はその形状もさることながら、色や質感も大事です。このため次のような方針でデザインしています。
・質感
ゲーム筐体の両側サイドパネルを木製オイルフィニッシュに
・グラフィック
カンバン部やジョイスティック天板のデザインは1980年代を彷彿とさせるシンセウェーブを意識したグラフィックを採用し、筐体の名前もFusion Unit Proなどと意図してダサい感じの名称としました。
(3)部品製造
多くの部品は既製品を活用しているものの、特異な意匠を構成するために自前製作や外注製造サービスを利用したものも存在します
自前製造
・サイド木製パネル(集成材から手切り 手作業)
・モニタ用VESAマウントアダプタ(FDM 3Dプリンタ)
・ジョイスティックユニットフレーム(FDM 3Dプリンタ)
・スピーカー穴モール(FDM 3Dプリンタ)
外注製造
・アルミフレーム
・外板用板金プレート(スチール、ステンレス)
・ジョイスティック天板用グラフィックラッピングフィルム
・看板用半透過ステッカー
(4)組み立て
アルミフレームがそろってから徐々に筐体を組み立てて行き、形状をおこしていきます。基本的にはCAD上で組みあがることは確認されているのですが、製造上組み立てが難しかったり、位置合わせが大変だったり、思わぬ部品がそろっていなかったりなどトライ&エラーはあったものの、概ね設計通りに組みあがりました。
(5)完成~実運用
完成した筐体は、机上に設置するデスクトップ筐体として東京ゲームショウ2024にて無事展示・運用、開発中のゲーム3タイトルをご来場の皆様に試遊いただきました。
一部のタイトルで、ジョイスティックを激しく操作するものがあり、筐体の耐久性が心配されましたが、一台も故障することなく4日間の展示を耐え抜くことができました。
(6)謝辞
今回、異例の開発に設計~製造~会場設置まで尽力いただいたフリーデザイナーの野口氏、構造アドバイスをいただいた株式会社加藤製作所 加藤氏に謝意を申し上げさせていただきます。ありがとうございました。
弊社では、イベント向けや実験検証向けのハードウエア開発も小規模・小ロットながら行っております。回路開発から機器選定、筐体製作などお気軽にご相談ください。